小さな独裁者

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映画「小さな独裁者」

 

前から気になっていた映画に、遅まきながら行ってきました。

脱走兵が偶然見つけた軍服の力を借りて、独裁者におさまるお話。

 

実話が元。

既に敗戦濃厚なナチス支配下のドイツ。

命からがら逃げ、車にあるトランクには、荷物が揃い、大尉に成りきる事が可能だった。上等兵に勘違いされた主人公は、この「役」を演じ切る事にする。

 

容赦のない暴力が支配には効果的。

上等兵に過ぎない主人公が、士官として「総統の任務」を盾に収容所に落ち着き、怪しまれながらも堂々とした態度と頭の回転の速さで切り抜ける展開はスリリング。

 

脱走兵を即決裁判にかけ、処刑する事で、恐れられ、収容所内で地位を確立させていく。戦時下の軍隊ならではの権力奪取法。

 

敵軍の空襲で収容所は壊滅し、主人公は部下たちと逃げた先でひと時の甘い時を過ごす。

 

 

当然最終的にはバレるわけだが、主人公が想像以上に若い!

だからこそ成りきれたのかとも思う。

姿勢よく歩き、命令するのも堂に入っていた。

年齢を重ねると動きにそれまでの環境が反映されやすくなると思われるので、ここまで立場を変えるとすぐ違和感を覚えるはず。

何より本人が落ち着かないため、バレやすい。

ここまで自信満々だと、挙動不審にならないので、周りも信じるのだろう。

 


「ちいさな独裁者」の監督ロベルト・シュヴェンケが、映画化した心境を語る。

 

自分を如何に騙せるかが、詐欺を成功させるコツかもしれない。

自分以上に実体を知る者はいないからだ。

逆に言えば、空虚な人物は、何者にもなれるのかもしれない。

周りがおぜん立てをし、それを糊塗する宣伝担当までいればなおの事容易だ。

誰かに頼りたい、縋りたい、と思う気持ちが、独裁者を許容するのだ。

貴方は、誰かに命令されたいですか?

私は頭ごなしの命令が嫌いなので、独裁者は不要です。