ケルトの神話、伝説を基にした作品。
狼に関する神話はあちこちにあるようだが、狼に嚙まれて変化、というのは
吸血鬼と似たような考え方に由来するものかな、と思った。
主人公の少女、ロビンは10代前半くらいで、父親に連れられてイングランドから
アイルランドにやってきた。
父親はアイルランドの新たな領主である護国卿に狩人として仕えており、娘のロビンも
狩人を目指しているが、森には連れて行かない。
ある日、父親に隠れて森に入ったロビンは、飼っている隼のマーリンをうっかり
射ってしまったが、不思議な少女に助けられ、彼女たちと関わる事になる。
ロビンが知り合った少女は、怪我を癒せる不思議な力を持つ「ウルフウォーカー」。
感謝し、助力しようと思うようになるロビンだが、護国卿に睨まれ、父親に阻まれる
なか、どう判断し、決断するのか。
ただの人が噛まれて変化する、というのはヨーロッパの独自の概念なのだろうか。
他の地域にもあるのか?
その辺りは不明だが、そういう設定なのだと思って見るしかない。
私はこの話には引き込まれた。
筋は単純だが、飽きさせなかった。
時折ある魔術を匂わせる描写も興味深かったし、すぐ拘束する護国卿に臆せず訴える
主人公の力強さには、心打たれた。
昨日までの「敵」を受け入れる狼たちの寛大さにも感心した。
最後はめでたしめでたし風ではあるが、恐らくあの森は焼かれたのだろうと想像できる
のがやるせない。
切り拓いてきた側の子孫としては、何も言えないのだが、これからどうするかは
また別の話である。
現在も気軽に森林伐採を繰り返しているので、人工林の有効活用を考えないといけない
とは思った。
現在はもちろん、かつて子どもだった全ての人に見て貰いたい作品だった。
映画『ウルフウォーカー』“ポスト・ジブリ”カートゥーン・サルーンの制作過程制作過程捉えた映像
物語の主役とも言える森を作る木々について扱った本。
伝説や物語が好きな人は、物語の世界を深められて面白いと思う。