地味なスパイ映画。
派手なアクションは控え目で、代わりに戦争犯罪の一端を見せる。
舞台はベルギーのブリュッセル。
そこに住む米国人の父娘。
父親役アーロン・エッカートの体格が良くて、目立たないがそれなりに整っている
容姿のおかげで、スパイは記憶に残ってはいけない、という言葉に説得力を持たせる。
IT技術者として働いている会社が、ある日突然閉鎖される。
しかも机等の備品がないだけでなく、自身の勤務記録や、銀行口座の記録まで消失するという異常事態で自宅に戻れないなか、同僚から襲われた親子は、何が起こったのか
探るべく行動を開始するのだが、というお話。
移民の自由化により多民族国家と化しつつあるベルギーの現実を生かした脚本。
親子が隠れ潜む住宅も、移民のものだ。
父親の勤務先を用意したのは一体誰なのか?
そして殺されたかつての仲間たち。
わざわざ企業の事務所を設けて閉鎖するだけでなく殺害までさせたのは何故なのか。
謎が謎を呼ぶ展開で、上手い。
父親の無駄のない動きも、「殺し」が業務の内だった人間としての説得力を持たせて
おり、信憑性を醸し出していた。
終盤の悪役も、大物感がない描写で、返ってそれらしかった。
しかし父親に向けて「良心を持つから」という言葉を投げつけるのは酷い。
「国を守る」だか「祖国のため」だかいう台詞を他人に向けて放つのはそれだけ無責任かつ冷酷な人間であるという証左なのかもしれない。
いい意味でのドキドキ・ワクワクはないが、面白かった。お勧め。
武器ビジネスを題材にした映画。面白い。
愛国心とは? 忠誠とは? を問う映画。力作。
良心を持つ者が邪魔だった? 白豪主義について考えてみて欲しい。