日本のいちばん長い日(1967年版)


日本のいちばん長い日(1967年版)予告編

 

劇場で見た。

劇場で見て良かった。

自宅で見ていたら腹が立って途中でやめていたかもしれない。

 

1945年8月15日の数日前からの、一週間ほどを描く。

ポツダム宣言受諾云々でもめていた政府が、原爆とソ連侵攻で降伏に傾く。

降伏が政府内で決定してから正式に諸外国に降伏するまでの政府部内、特に軍部内の

ごたごたを描く力作。

 

敗戦は動かないのは自明になっても、国内の地上戦で覆すだの、国内の男子一千万を

投入するだのと、無茶苦茶を言う軍人。

第二次世界大戦初期は現場と司令部を行き来するのが当然だったが、戦況が危うく

なってからは、現場を知らない人間ばかりが司令部にいて、机上の理論を振りかざして

無茶な作戦を立てるようになったとか。

 

わめいている軍人たちが現場を知らないから威勢のいい連中だというのに思い至る。

前線の兵士も、国民も飢餓にさらされているのに、どの顔も丸々としていて不快

そのもの。

当然のように燃やされる書類。

 

最初から最後まで目を見開いていた若手の軍人。

誰か知らないが、熱演だった。

 

沢山の人々を死に追いやっておいて、反省どころか

「今やめたら英霊に申し訳が立たない」と降伏を拒否する正当化の理由として使う。

現在の歴史修正主義者のお題目と何ら変わらない。

 

首相から軍人まで「国体護持」を連呼。

昭和天皇だけが「国民の命云々」と発言。

結果的に天皇が良心的な人間に思える。

 

しかし逆を言えば天皇は唯一の「神」なので、「国体護持」などと発言せずとも、

右翼から襲われる心配がないから「国民云々」と言える、というのもある。

 

とにかく当時の軍人たちの言動を見ると頭がおかしくなる。

気力まで奪われたような気がした。

合理的な考えよりも純粋な精神を称揚する軍隊。

日本人は合理的な考えが苦手、というよりむしろ嫌いなのでは。

冷徹な計算よりも精神的な「あるべき論」が先に立つようでは話にならない。

軍隊など持つのは「基地外に刃物」そのものではないか。

「戦争が出来る普通の国」などになるべきではないと明確になった。

健全な民主国家にもしなれる日が日本にも来たら、その時初めて軍隊についても

考えたら良いと思う。

 

印象に残ったのは、鈴木首相役の笠智衆阿南惟幾役の三船敏郎

修羅場をくぐった首相の威圧感と、頭脳よりも人柄を買われた阿南の人間性

描かれていた。

軍服は二割増しで美形に見えるのは事実だと思う。

この映画の三船敏郎はカッコイイ。

 

気力に余裕がある時に見るのをお勧めする。

一度は見るべき映画。

 

原作本をどうぞ。

 

文庫

文春文庫

日本のいちばん長い日 決定版

半藤一利

  • 定価:本体600円+税
  • 発売日:2006年07月07日