勝手な暴力と勇気の話。
自由貿易協定と搾取の実態。
これは見るのに気力のいる話だった。
だから一人でも多くの人に見てみて欲しい。
アメリカ人の女性記者が上司から取材の提案を受ける。
メキシコの米国との国境沿いの町での行方不明事件だ。
その町には各国の工場が立ち並び、米国市場に商品を供給している。
24時間稼働し、主に若い女性が低賃金で働く。
工場では退勤時にバスを用意しているが、従業員が行方不明になっても工場は対策を
取らない。
経営側が従業員の安全を確保するつもりがなく問題を放置しているのだ。
上司に言われて現地にやって来た記者は、信頼できる仲間とともに取材を始めるのだが、という話。
これは冒頭に状況を簡単に説明する場面があり、その後その事件を基に話も動いて
行くのだが、とにかく凄惨な現実が突きつけられる。
一握りの金持ちと米国に代表される金持ち国の「豊かな暮らし」の為に搾取される
貧困層、善意の活動家にもある偏見、それらをさり気なく織り込んであり、無駄のない
描写。
「泣かせ」の場面はなく、感動する事もないが、諦めず戦う事の重要性を示す映画。
そして惨い現実の前に戦うことではなくより非力な立場の人々への暴力で憂さ晴らしを
する人間の身勝手な傲慢さと女性を見捨てない男性への権力側の仕打ちなど、支配のやり方を見せてくれる。
現在のメキシコは内乱状態だと言う。
かつては豊かな国だったようなのに、合衆国の麻薬汚染のせいなのか、自由貿易のせいか?
他にも理由があるのか?
是非考えてみて欲しい。
本邦も他人事ではない。
カネが無くてもどこまで出来るか?を題材にしている。
資本家による搾取の実態と影響に正面から切り込んだ映画は少ないので、主演のジェニファー・ロペスと制作チームに拍手!