今回の作品は「22年目の記憶」です。
1972年南北対話の予行演習として、売れない俳優に金日成を演じる、という大役が舞い込みました。
彼は韓国の保安機関で、指導教授・収監されている学生と共に、役作りを始めます。
だんだん板につき、役にのめりこんでいく彼。
しかし、予定の会談は流れ、役に取り込まれた状態の彼は、自身を金日成だと思いこんだまま、22年経過してしまいます。
22年後、匙を投げた息子により、老人ホームに入居している彼は、記憶を取り戻させたい息子の都合により、同居を始めます。
その後、彼は政府の都合により一世一代の大舞台を踏むことになるが・・・。
権力に振り回された、心優しい一般人とその子息の関係が主軸です。
私はたまたま「1987」という映画を見て、韓国の近代史に関心を持ち、その流れで鑑賞する事にしたのですが、南北分断、停戦ではなく休戦、という事の深刻さに当事者の一員である日本政府と国民がほぼ無関心なのは、異常な事なのだな、と痛感しました。
Twitterでは、日本は朝鮮にはいい事しかしてないのに憎まれてるなんて、とまで書き込んでいるアカウントもあり、いくら何でも少しは想像力を働かせたら、とうんざりしましたが、声の大きい人たちの言動を真に受けたら、そういう感想になるのもむべなるかな、と感じました。
そもそも、併合したという事は、侵略した、軍事力で、その後軍隊が駐留しているわけです。今まで存在しなかった軍が駐留するだけで、問題が発生するのは想定できるはずなのに、「いい事しかしてない」はあまりにも傲慢で愚かな発想です。
日本は少なくとも南北分断に追い込んだ無能な宗主国である事は自覚すべき、と書いているアカウントもあり、その視点が不足していた事を私も再認識する事になりました。
映画に戻ると、彼はその役を演じる事で、完全に自分を取り戻す事ができましたが、時間は残酷でした。
好きな仕事なのに、無力感に苛まれて生きてきた彼には、救いになったと思います。
最後は、未来への展望が開ける形で終わります。
この映画を見て、当事者としての日本としてどうすべきか、考える気になってくれたら嬉しいです。
おまけ