主演クリスチャン・ベール×監督アダム・マッケイ!『バイス』予告編
アメリカ合衆国副大統領ディック・チェイニーの話。
なかなか斬新な構成です。
主人公について語っているナレーションが誰なのか分からない状態で時間が進行して
いきますが、途中で答えが提示され、あっと言わされます。
平凡で取り立てて才覚もない主人公が政治の世界に触れることで、段々と頭角を現し、
冷酷な人間になっていく様は圧巻です。
人間を支配し、制御する事は容易なのだと示されます。
マスコミを使った世論操作、民主党の事を「何でも反対」と言わせる事など、自民党
のやり方が誰を模倣したものか理解できました。
合衆国の統治機構の盲点を巧みに利用した支配の仕方は、関心させられるものが
ありました。
彼の共和党に関与するきっかけはラムズフェルドだったようです。
彼がCEOを務めた会社の株価がイラク攻撃で5倍になった事も出てきました。
笑いも散りばめられており、面白い映画でした。
何故映画化が可能だったのか不思議だったのですが、キッシンジャーを蹴落としたのが
彼だったのを知り、腑に落ちました。
政敵が復権したからですね。
全体的に怖い話でしたが、それでも彼は最後にこう言います。
「国民に仕えられて光栄だった」と。
有権者に向かって「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と言い放つ日本の首相
と異なり、行政府の立場を理解し、憲法を踏みにじる意思はないようです。
怖い映画を見て現実の危険性を実感できるという貴重な経験を積んだ時間でした。
DVD等が発売されたら、是非見て頂きたい作品です。
『バイス』4.5(金)公開/『バイス』クリスチャン・ベール_町山智浩氏インタビュー映像《本年度アカデミー賞受賞!》