ジョーンの秘密


映画『ジョーンの秘密』予告編

 

実在のスパイの話。

いわゆる教育を受けた工作員ではなく、情報提供者なので、スパイという評価には

違和感がある。

 

前回紹介したスターリンを題材にした映画「赤い闇」と少し後の時代、1938年~1945年頃までを主に描写している。

 

高齢になった主人公ジョーンが、ある高官の死に衝撃を受けるところから物語は

始まる。

彼の死により主人公の過去に捜査の手が及ぶ。

 

子どもにも隠していた過去が暴かれ、主人公はどうなるのか。

 

物理学を学ぶ学生だったジョーンは、ひょんなことからドイツ系ユダヤ人である女性

ソニアと知り合う。

ソニアに連れていかれた映画鑑賞会で、ソニアの従兄弟レオと知り合う。

レオにひかれたジョーンだったが、どうなるのか。

 

男に利用されて情報提供者になるわけではない。

彼女なりの信念があっての事だった。

国家反逆罪に該当するかどうかは微妙か。

 

核の抑止力については、あくまで結果論に過ぎないと思う。

フルシチョフは、核を使わなかった事で小心者と蔑まれて権力から追い落とされた

というし。

 

米国に盲目的に従っていれば安全、という普通の日本人の見解の目出度さは度し難い

という事はこの映画を見ればよく分かる。

 

 

 

核戦争の具体的脅威が最も実感された事例。

通常業務が直接的な危機の引き金になったらしい。

 

米国の一人勝ちは恐ろしい、というのは現代社会で示されているし、ジョーンの

主張にも一理あるとも言える。

 

ソニアとレオの関係については、何となく腑に落ちる所があった。

レオが躊躇したのは、彼なりのジョーンに対する誠意だったのかもしれない。

 

ソニアは、何者だったのだろうか。

共産主義を信じていたのか、ソ連で権力を得たかったのだろうか。

 

ジョーンが曲がりなりにも自分の意思で情報提供者になったのを見た事で、

日本の「西山事件」の、暴力を使って女性を従わせて実行犯にさせる悪質さが

際立つ結果になった。

 

レオはギリギリで卑怯な真似をしなかった。

だからジョーンは自分の人生を生きる事が出来た。

人生は出会いで決まるのだ。

 

社会的身分の低い女性、という大前提を忘れずに見て欲しい。

 

密約―外務省機密漏洩事件 (岩波現代文庫)

密約―外務省機密漏洩事件 (岩波現代文庫)

  • 作者:澤地 久枝
  • 発売日: 2006/08/17
  • メディア: 文庫
 

 

 この映画とは直接的な関係はないが、情報提供者になった人の心情は想像出来る本。

 


裏切りのサーカス(プレビュー)

これもソ連と英国の関わりの映画。

こちらはフィクションだが、参考になると思う。

 


映画『ジョーンの秘密』ソフィー・クックソン インタビュー1

 

ただ与えられた環境に従って日々を過ごすか、葛藤して足掻くか、どちらも人生だ。