パーフェクト・ケア


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「後見人制度」を利用する際の各種疑問・疑念について取り上げた問題作。

多分犯罪映画に該当すると思うが、爽快感は全くない。

しかしほぼ全ての人に関係がある。そんな映画。

 

高齢者の「後見人」になる事を事業として法人経営をしている主人公。

家裁判事からも信頼されており、主人公の証言は大体採用される。

 

主人公が要介護者として施設に入所させた女性の息子が、母親に会わせろと施設を

訪ねたり、裁判所に訴えたりするが、決定は覆らず、子は親に会えないままだ。

何故面会禁止が許容されているのか、理由は分からない。

 

主人公は医者と組んで、患者を紹介してもらっている。

狙い目は親族がいない人物。

死後、財産を返さなくていいからだ。

 

この主人公だが、とある一人暮らしの高齢女性を医師から紹介され、親族がいない事を

確認して実行に移す。

「緊急」という事を名目に本人には知らせず裁判所命令を得て、本人の身柄を押さえる。

「監護」を名目に人権を奪われる恐怖。

 

当然のように鍵を奪い、携帯電話も取り上げ、家を売りに出す。

その躊躇のなさ、倫理観の欠如にゾッとさせられる。

 

これは確かに何処かで現在も行われている事を、分かりやすく描写しているのに

過ぎないのだ。

 

件の一人暮らし女性から映画はアクション映画の様相を呈すようになるのだが、

女性本人は特に見せ場もなく、他者を当てにするしか出来ない。

それだけ「後見人」の権限は強いのだ。

 

日本でも後見人の立場を利用した犯罪は耳にするが、ドラマ等で題材になった事は

まだないような気がする。

 

この微妙な題材を娯楽作品として処理したハリウッドは凄い。

名探偵コナンルパン三世は何人殺されても平然としているが、あれは創作物。

だがこれは現実に根差した物語。

怖さの質が違う。

この映画は出来るだけ多くの人に見て欲しい。

人間はいずれ皆老いるからだ。

どれだけ資金があっても関係ない。

目を付けられたら終わりなのだ。

 

最後は自分が頼り。

暴力が全てだ。

それすら奪われるのが「監護」の力だ。

裁判所の決定を覆す合法的な手段を構築出来ないものだろうか。

 

下手なホラー映画より怖い映画。

笑える場面もない事もない。

 

好感の持てる登場人物は一人もいない。

最後の場面は意見が分かれるだろうが、私はいい終わりだったと思う。

「監護」で奪われる前に、全てを奪われたのは、報いであり、救いでもあると言える

からだ。

色んな人の「後見人」に対する見解を知りたいと思った。

 

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「裁判」の恐ろしさなら負けていない。この映画も必見!