9.11を名目に行われた米国の外国人略取拘束事件についての映画。
日本では情報開示の際の公文書の黒塗りは常識と化しているが、米国でもそうなんだと
驚いた。
しかしかの国は日本と違って公文書自体は大事にしているので秘密にはしても改竄や破棄はしないのだろうという安心感はあった。
何故モーリタニアンが目を付けられたのか、私には良く分からなかったが、電話に「彼」からの履歴があっただけなのだろうか?
金持ちの一族だというから、縁者は多そうだが。
それはともかく、モーリタニアンが死刑にされるべき人物として名指しされてから、
主人公のナンシーの動き、検事の職務への誠実さ、若手弁護士の正義感には好感が
持てた。
特にナンシーの百戦錬磨ぶりと検事の憲法への忠誠心が良かった。
モーリタニアンがキューバのグアンタナモ基地で知り合った「マルセイユ」との関わり、モーリタニアンが理性を保てたのはイグアナのおかげかと何となく思った。
後彼は米軍の看守から一定の信用を得ていたように思う。
軍事基地の「イグアナを傷つけたら罰金一万ドル」という掲示。
拷問が日常、むしろ推奨されている軍事基地でのイグアナへの暴力を禁止する。
アフリカの国立公園が欧米の植民地だったからこそ存在し、現在も貴重な動植物
の生息地域だという現実を思わせるものだった。
貧しい外国人は、動物以下なのだ。
これは、典型的な欺瞞である。
動物保護を否定はしないし、意義はあると思うが、また別の問題として存在している、
という事に過ぎない。
裁判所と司法関係者は憲法に従うという理性を示した。
だが、その後政治的理由で抑留されたまま、という残酷な話だった。
一応彼は解放されたが、現在も問題は続いている。
ナンシーが語っていたが、「ここに基地を作ったのは、ワシントンから遠ざけるため」
だと。
軍人や看守を暴力が支配する日常に慣れさせて感覚を麻痺させ、常識や理性を奪う為
なのだ。
全体的に米国は覇権国家に相応しい国だという事を見せる映画だった。
もう少し暴力を否定する風潮を作って欲しいし、目指したいものだ。
力作。
これも面白い。知名度はいまいちらしい。見て欲しいのでおすすめ。