ピノチェト大統領による独裁政権の爪痕と、その影響による現在のチリの社会情勢を、
アンデス山脈を背景に描写する映画。
日本でも新自由主義による富の独占が問題になっているが、世界で最初に実験場に
されたと目されているチリ。
チリはアンデス山脈を背に位置している国。
左派のアジェンデ政権が米国の資金援助を受けたとされるピノチェト将軍によるクーデターで妥当され、軍事独裁政権が築かれた。
冷戦のただ中、左派の政権が鉱山を国有化したり、土地を貧しい人々に持たせようとした事に危機感を持った米国が介入して右派政権を作らせたと言われている。
住民の為の政策に取り組んだ左派政権と違い、国粋主義以外の政策が特になかったらしい軍事政権は、米国には従順だったので、どれだけ一般人を弾圧しようと、米国は介入したりはしなかった。
チリは米国の掲げる自由と民主主義のお題目の御都合主義を体現する国の一つである。
そんなピノチェト大統領も、最後は英国で逮捕され人生を終えた。
だがチリの置かれた状況は、大して変わらなかった。
確かに拷問や行方不明者はいなくなった。
デモも行える。
だが、鉱山は海外資本に買収され、風光明媚な一等地は私有地で、一般人は立ち入れない。
新自由主義の結果だ。
シカゴ学派は、現在でも自分たちの実績を誇っているとの事。
ここでは、貧しい人は「存在しない」。
何故なら富裕層が数として認識しないからだ。
廃車と同様?
人間社会の醜さと相まって、変わらぬもの、普遍的なものとして取り上げられるのが、
6000m級の山々によって守られ、隔離され、作られた大地。
それがチリ。
独裁者によって招かれた学者たちによって作られた体制で金持ちになった一部の人々
と海外資本家。
過去と向き合う機会は逸してしまったと。
だが、記録を残す事で、いつか検証できるようになるとも。
公文書改竄や破棄を行う国に住んでいると、未来を夢見る事の困難が身に染みる。
いつか、責任者の責任を問える日は来るのだろうか。
出来るといい、と願った。