対米開戦直前の時期の日本。
ある程度恵まれた階層の人々が見た戦争を描いた映画。
無視されているが、大陸には軍隊が進出したままである。
貿易商の妻が主人公。
友人の英国人商人がスパイ容疑で逮捕され、夫がお金で片を付ける。
一方、主人公の昔なじみが憲兵になる。
夫婦と憲兵の関係はどうなるか。
基本的に室内劇。
演劇でも構わないような感じ。
冒頭の映画撮影は、何の為かと思っていたが、終盤に効いてくる。
夫の貿易商は、かなり用意周到な人物で、偉ぶらず、物腰柔らか。
妻を切り捨てたように見えたが、恐らく平穏な暮らしをさせる為に、守ったのだと思う。
主人公は、夫のそんなところが好きなのかもしれない。
最後の台詞は、なかなか良かったが、現在の日本も、大して変わっていないのでは。
未だに、天皇批判はタブーだし。
亡国の君主そのものである昭和天皇ですら、平和主義者として守られている。
守るべき人々を赤子として戦争に駆り出した君主が。
しかし「赤子」をこき使うなど酷い国だな。
映画としては、静謐な感じで、戦時下の物資の不足や戦争被災者等の影は見受けられなかった。
対米開戦前だから、物資はまだ潤沢だったのか、恵まれた階層だからまだ影響していなかったのか、私には判断は出来なかった。
反戦映画と思っている人もいるようだが、私は夫婦愛の話だと思った。
勇気と行動の重要さも。
暴力描写も、性的場面も特にないので、幅広い年齢の人に安心して見て貰えると思う。
お勧め。
同じ「スパイ」ものだが、こちらは遥かに怖い。