KCIA 南山の部長たち


なぜ崇拝する大統領を暗殺したのか…イ・ビョンホン主演『KCIA 南山の部長たち』予告編

 

韓国の近代史を抉る娯楽作品。

これも力作だった。

 

有名な朴大統領殺害事件を題材にしている。

現職大統領の殺害事件が起きた事は知っていたが、実行犯は勿論、事件の背景も

知らなかったので、衝撃的だった。

 

1979年の韓国。

1961年、軍事クーデターで権力を握った朴大統領が、18年の長期政権ですっかり

増長し、傲慢に振舞うようになっていた。

 

権力を握ると同時に作った諜報機関KCIA、通称南山は存在自体が恐怖の対象

となっていた。

 

事件が起きた当時は、「南山」とは別の側近グループが、権力を握っていた。

 

大統領の意向に沿って「南山」が、野党を攻撃したり改憲させたりしていた。

それでも批判が無視出来なくなったときは、「南山」も犠牲にした。

「君のそばには私がいる」が大統領の決め台詞だ。

「君の好きにしたまえ」と。だが責任を取るとは言っていない。

 

事件の頃には、権力に溺れた大統領は、平気でデモ隊への発砲許可を出すように

なり、あろうことか落下傘部隊による攻撃命令まで考えていた。

 

米国から次について準備するよう言われた「南山」の部長である主人公には、

決断の時が迫っていた。

 

韓国の近代史ものは、今のところどれも外れ無し。

これも面白かった。

大統領殺害の実行犯については、完全に予想外だったが、革命の理想を忘れず、

国家と民主主義を大事に思っている人なら、そうするかもしれないと合点がいった。

 

狂気の集団の中で理性を維持するものは、孤独で、疲れるものだという事を突きつけられる作品でもあった。

 

米国の意向に逆らえず、批判する時は米国の名前に頼る主人公の気持ちは、何となく

理解出来た。

先代部長の件については、何故主人公はあの決断をしたのか分からなかった。

国益」の為かもしれないが、特に必要だとも思えないのだが。

彼が決断した理由の中には、先代の件も含まれているだろうとは想像出来た。

 

軍事独裁政権の中、諦めずデモを続ける韓国の人々の強さ、行動力には敬意を表する。

団結出来ない日本人には難しい。

権力側に筋を通す人が、現在の日本にはいなくなってしまった。

 

この映画を見た人には、「1987」をお薦めする。


映画『1987、ある闘いの真実』 血が通う人物描写|エンタメ!|NIKKEI STYLE

軍事独裁政権打倒の狼煙だ。

 


【KCIA 南山の部長たち】『ユゴ 大統領有故』同じ暗殺事件を描いたコメディ映画【至極個人的なレビュー/#139】

 


俳優イ・ビョンホン、映画「南山の部長たち」で主演男優賞を受賞(WoW!Korea)|dメニューニュース

 

 

tanosiieiga.hatenablog.com

 当時の韓国社会の実態、「諜報」の無意味さ、当事者にされた人の哀れさを描いている。

家族の話であり、歴史の話でもある。

奪われた時間の話でもある。

歴史は、人の活動の記録と記憶の積み重ねだという事が良く理解できる。

出来れば見て欲しい。